だけど、すぐに黒崎くんに腕を捕まれ足が止まる。


「なんで無視すんだよ」


「え、いや、あの...私は別に...」


彼女の突き刺さる視線に、私は黒崎君の手を振り払う。


「今から何にも予定ないだろ?」


「え、わ、私?」


「おまえの目を見て聞いてんのに、誰の予定を聞くんだよ」


ごもっとも。

じゃなくて!


わたしは恐ろしい空気を醸し出している彼女をチラリと見る。


向けられた黒い影が、私にだけ延びてきている。

ここは、断るしかない。


「わ、私、今日は......」


「一緒に帰ろうぜ」


この人は、今この状況をわかって言ってるの?


あなたには、私に伸びているこの黒い影が見えないの?


実際にはないものだから見えなくて当たり前だけれど、それでも彼女の鋭い目付きには気づくでしょ?


とにかく早く断らなきゃ。

私が黙っていてはらちがあかない。


「悪いけど、一緒には帰れな......」


「はい!決まり!途中までは一緒には帰れるもんな」


......はい?

この人の頭大丈夫?


何がどうしてそう決まったの?


人の話を最後まで聞かずに話を進める人が一番嫌い。


「いや、だから私は」


「行くぞ」


「え、ちょっ!待って!」


突然手を引かれ、体が前のめりになる。


廊下にポツンと残された彼女を振り替えると、彼女も何が起こっているのか理解に苦しむ表情をしていた。


だけどそれが次第に険しさに変わる。


これはやばい......。

明日、絶対何かが起こる。