わ、私ってば何をこんなにペラペラと。


私がホタルを見たことあるとか、ここにいる人には全く必要のない情報だって......。


興味だってないだろうし。


私が黙り込むと、目の前に座っていた黒崎くんが優しく口角を上げて私を振り返った。


「俺も、思い出のホタルを守りたくてこれに参加したんだ」


心臓が変な動きをした。

予想外……。黒崎くんの微笑みに、鼓動の速度が増したような気がした。


気のせい。絶対に気のせい。


「俺だけじゃないよ。この町に住んでる人は多分きっと、ホタルを守りたいと思ってんじゃないかな。ウチのじいちゃんもだけど」


ドクンっ!

まただ。


ただ、目の前で黒崎くんが笑っただけなのに......。


私、変だ。


さっきも必要ないことをしゃべってしまったし......。


気を引き閉めないと、大変なことになる。


清掃作業の担当の先生が教室に入ってきて、騒がしかった教室は急に静けさを戻した。


清掃のスケジュールが書かれたB5サイズのプリントが前から回ってきてそれに目を通すと、嫌な視線を感じた。


プリントを見るふりをしてちらりと覗き見ると、桜庭さんがこちらを睨んでいる。


原因は、聞くまでもなく黒崎くん。


彼女は彼が好き。


だからこの清掃作業にも参加するんだと思うけど......。


気を付けなくちゃ。