「えっと......転校生の......」
彼女は、わざとらしい質問の眼差しを私に向ける。
「古川です」
私は軽く頭を下げ多くは答えない。
彼女はまたわざとらしく笑顔を作り『あ!古川さん!』と顔の横で人差し指を立てた。
「ごめんね。私、人の名前覚えるの苦手で」
苦手も何も、覚える気なんてありませんと顔に書いてある。
昨日の自己紹介は何だったんだ。だけどまぁ、本当に名前を覚えられないのなら私にとってはありがたいことだ。
「何で黒崎くんと古川さんが一緒にいたの?」
「そーそー。そこ聞きたいよなぁ、真衣香ちゃん」
この男は......。
私の空気を読み取って話を変えるくらいの気はきかないのかね。
まぁ、出会ったばかりの人の心を読むなんて無理だろうけど。
とにかく、私と黒崎くんが会っていたのは別に意味なんて......。
「どうしてとか、別に理由はいらなくね?」
予想外の返答に、私を初め、近くにいた人ほぼ全員が唖然とした。
黒崎くんのその言葉にどんな意味が込められているのか、次の言葉を待っているように見える。
「ただ夜道が危ないと思ったから送ったんだよ」
「だぁかぁらぁ、俺たちはその前が聞きたいの。どうしてコソコソ二人っきりで会ってたわけ?」
またしてもこの男は!
「古川が俺んちに来たからだよ。コソコソじゃねぇだろ別に。それに、俺らがどこで何してようが勝手だろ?」
「なんで聖菜ちゃんが黒崎んちに行ったの?」
ダメだ。
この人。なんでも気になってしまう5歳児と同じだ。
理解できるまで永遠と聞き続けるつもりだ。