星屑の中、君の笑顔が輝いている



黒崎くんは、外見からでは想像できないほど純粋で、今この時を大切にできる人だった。


今思えば、彼の言動一つ一つが理解できるのに、どうしてあの頃の私には理解できなかったのだろう。


当時の私は、無知だった。


私に大切なことをたくさん教えてくれたんだ。



鹿児島空港からバスで約1時間半。


お茶畑の緑に囲まれた小さな集落が見えてきた。

8年ぶりの、のどかな田舎の風景。


いつも過ごしている都会とは時間の流れが違うと錯覚してしまうほど、のんびりとした空気に包まれていた。


バスを降りると、田舎独特の、牛の糞のような鼻をつく臭いがする。


本当なら鼻をつまんでしまうのが正しいことなのかもしれないけれど、私は思いっきり深呼吸をする。


この臭いが、”ああ、帰ってきた”と思えるから。


たった2年過ごしただけでここが故郷だと思ってしまうのは、やっぱり彼がいたからなのかもしれない。


バス停から徒歩で約10分。

多くの人が眠る墓地に到着した。


その中から”黒崎家”と書かれたお墓に行き、墓地入口で買っておいた花を供える。


しばらく墓石を眺め、静かに声をかけた。


「久しぶり」


8年振りの挨拶。

出した声は少し掠れてしまって、小さく咳払いをする。


怒っているかな。

今まで顔を見せにも来ないで......。

あれから8年だ。

怒っているに違いない。


私が次に何を言おうか言い訳を考えていたその時、優しい風が吹き、私の頬を撫でた。


彼だ......。

黒崎くんだ......。


こんなに優しい風は、彼しかいない。


『やっと来たか』と、彼が笑いながら言ってくれているような気がしてならなかった。


目頭が熱くなる。


だけど、唇を噛んで耐え、何でもないふりをした。


「あとで、おじさんやおばさんに会いに行くね。おじさん達、今夜泊めてって言ったら泊めてくれるかな。無理だって言われても、無理やり泊まっちゃってもいいよね? 実は、もうお泊まり道具持って来ちゃった」


おどけて言いながら、パンパンに膨らんんだバックを黒崎くんに見せる。


なんて気持ちのいい風だろう。

私の頭を撫でて、優しく包み込んでくれる。


なんでだろう。

急に、人恋しくなった……。


「ねぇ、黒崎くん。会いたいよ……」