『私、聖菜と友達なんかじゃないよ』


嫌なことを思い出した。


親友だと思っていた相手に裏切られた、あまりにも辛すぎる記憶。


消せることなら、消去したいデータ。


結局は、つまらやいヤツははずされる。


「どうした? 突然」


甦った吐き気のする記憶に溺れそうなところを、彼の声で現実に戻ってきた。


ハッとして彼を見る。


その表情には、先程の苛立ちは感じられない。


私を心配そうに眺めている。


「気分でも悪いのか? 急に苦しそうな顔してたけど」


私は彼を無視して再び歩みを進める。


だけど行く手を阻まれた。


「窮屈な考え方はやめてさ、まぁ、空を見てみろって」


彼の人差し指が夜空に向く。


ゆっくり見上げると、瞳全体に輝きを放つ無数の星がうつった。


......キレイ。


「窮屈な時ほど空って見上げると落ち着くんだぞ。知らなかっただろ」


不覚にも涙が出そうだった。


「あんたが何にそんなに突っかかってんのかしらねぇけど、楽しく生きたもん勝ち。そう、思うけどな」


「.........」


「な?悪くないだろ?」


無視しなくちゃ......。


外見に見会わない彼の優しい微笑みを見て、拒否する心が生まれた。


彼が私を無視しないのなら、私から無視すればいい。


そうだ。そうしよう。

そうするのが一番いい。