数メートル先には淡く光る街灯。
その灯りには力がなくいつ消えてしまうかわからない。
「何でそんなに俺を避けるんだよ。俺、何もしてねぇじゃん」
私は目を閉じて面倒臭い空気を思い切り表に出しながら、深く息を吐く。
「そう。あなたは何もしてないよ。何もしなくていいの。今も、これからもずっと」
「は?」
「私に関わらないで。私たちは確かに豊田さんにお世話になってるけど、孫のあなたには関係のないことだから、私がこれから先も豊田さんの家に行ったとしても、あなたは私を無視してていいの」
田舎って本当に静かだ。
私の声が夜道に響いてる。きっと、この街灯の灯りよりも私の声の方が力が強い。私の大声のせいで灯りが消えてしまいそうだ。
「まぁ、何言ってるか俺にはよくわかんねぇけど、無視はできねぇな」
「どうして?」
「人として無視は良くない」
「そんなヤンキーみたいな外見してて無視はできない?無視ばかりしてそうだけど?」
彼がハッと息を吐いて笑って余計ムキになる。
「うわ、出た。外見だけで人を判断するやつ。失礼極まりないなおまえ」
「そんなだらしのない格好してるんだから悪く言われても仕方ないんじゃない?」
「これは個性です」
「はい出た。個性個性言って校則を違反する人」
私の言葉で彼が押し黙った。