どうしてこんなことになっているのだろう。


関わりたくたかった相手と、二人夜道を歩いているなんて。


本当にひとりで帰れた。


それなのに口ごもって断れなかった私が悪いのだけど。


「ねぇ、そんなに離れて歩かなくてもよくない?」


車一台がやっと通れるほどの道の、端と端を歩き続けると、彼が深く息を吐きながら言った。


「私は一人で大丈夫なので、どうぞ帰ってください」


私は反対側にいる彼を見ずに声だけを発す。


「ああそうですかわかりましたって引き返せないだろ?じいちゃんから頼まれたのに」


「だったら明日でも私から豊田さんには話しておきます。今後、送りは必要ありませんって」


私は言いながら歩く速度を上げる。


少しでも彼と距離を取れば、もし目撃されたとしても、一緒にいるとは誰も思わないだろうから。


「ちょっと待てって!」


右手にグイッと引っ張られる力を感じて、私は歩みを止めた。