「それじゃあ達也。聖菜ちゃんを送ってってやりなさい。夜は物騒だから」


豊田さんの言葉に、私は両手を大きく振って拒否した。


「い、いえ!いいんです!私は大丈夫です!ひとりで全然平気ですから!」


私はそれだけ言うと、ふたりの顔を見ずに黒崎くんの横をすり抜けた。


だけど、左腕を強く掴まれ意思とは関係なく体が停止する。


驚いて左腕を見ると、黒崎くんの手が私の腕を掴んでいた。


「送ってってやるからちょっと待ってろ」


「え、いや、あの」


「じいちゃん、こいつ見張ってて。スマホとってくるから」


そう言って、少しだけ新しい方の平屋の中に小走りで消えていき、1分もしないうちにまた出てきた。


「お、逃げずにちゃんと待ってたな」


逃げるもなにも、豊田さんに腕を掴まれているのに逃げられるわけがない。