勢いをつけて振り返ると、手に持っていたビニールが大袈裟に鳴いた。
「び、ビビった……。なんだよ、そんな驚かなくてもいいだろ」
ど、どうして黒崎くんがここにいるの?
黒崎くんも豊田さんに用事?
だとしてもどうしてこのタイミングで現れるのよ!
よりにもよって黒崎くんだなんて......。
「もしかして、じいちゃんに用事?」
え......。
じい、ちゃん?
今、じいちゃんって言った?
じいちゃんと言うことは......。
黒崎くんは、豊田さんの、ま、孫!?
えぇぇ!?
目を丸くして黒崎くんを見上げる。
「なんだよ、んな表情コロコロ変えられて見られたら俺、どうしたらいいんだよ」
黒崎くんに言われて、私は目を反らしてから丁寧に泳がせた。
「じいちゃんに用事だったんだろ? 待ってろ。今俺ん家にいるから呼んでくるわ」
俺ん家にいるって。
え、待って。本当に頭がついていかない。
黒崎くんは豊田さんの孫で、豊田さんは黒崎くんのおじいさん?
疑問と焦りが同時に頭に押し寄せパニックになる。
「お~、聖菜ちゃん。待たせて悪いね」
また後ろから声をかけられた。
ショート寸前の頭からはきっと白い煙が出ていると思う。
「こんな夜にひとりでまた、どうかしたのかい?」
心配そうな表情の豊田さんの隣には、黒崎くん。
私は豊田さんの質問に答えることなく、豊田さんと黒崎くんを交互に見比べた。
あまり似ていない。
本当に、孫とおじいちゃんなのだろうか。