理由はわかったけど、それは別に私じゃなくてもお父さんが行けばいいじゃん。
「今日、聖菜のことを気にかけてたんだ。ほら、登校初日だっただろう? だから、お前が行って話をしたら安心するんじゃないかな?」
「あ〜……うん」
何だか気が乗らなかったけど、お父さんがお世話になってる人だ。
もし私たち親子が嫌われて仕事をやめろと言われたら、私たちは路頭に迷うことになる。
それだけは避けたい。
「お父さん、その間に洗濯とか済ませとくから。よろしくな」
「う、うん」
ガサリと手に持たされたビニール袋には、筑前煮の入ったタッパー。
いい匂いはする。
おすそ分けするということは、納得の味になったのだろう。
私は、筑前煮とスマホだけを持って家を出た。
薄暗い夜道で誰にも会うことはないと思ったので、スウェットのまま。
夜だし、スウェットで訪ねても失礼ではないよね?