「どうだ? 今夜のメニューはインスタ映えしそうだろ?」


お父さんの口から出た言葉に違和感を感じ思わず笑ってしまう。


「どこで覚えたのそんな言葉」


ネット系に弱いお父さんはインスタグラムなんて知らないはず。

料理のアプリだって、私が教えてあげたんだから。


「昼のワイドショー見てたら出てきたんだよ。今流行ってるんだろ? 写真を撮ってアップするのが」


「まぁね」


「だから、少しでもインスタ映えするように盛り付けにこだわったんだ。あ、もちろん、味も悪くないと思うけど」


私は、お父さんの努力をたたえるように拍手をしといた。


「早く食べようよ。お腹すいたし」


ギュルルとなるお腹をさすって両手を合わせようとすると、お父さんは眉を寄せて口を尖らせた。


「写真撮らないのか?」


今度は私が眉を寄せる。


「何で?」


「インスタ映えを狙ったんだぞ?」


あ〜……。

私、インスタグラムしてないんだよね。


私は両手を合わせたまま顔を引きつらせ、だけど、お父さんの努力をたたえるためとりあえずパシャりとスマホのカメラに納めた。


知らない土地に引っ越してきた上にお母さんがいないという、娘の私の気持ちを考えてしてくれたことだ。


その優しさだけは受けとっておくよ。