彼、黒崎くんは、意味深な言葉を落としておいて、その後私とはなんの接点もなく過ごしていた。


もちろん学校生活を静かに過ごしたい私としては有難いことだけれど、彼に対しての謎は余計深まるばかり。


別に深い意味はない。


そう思いたくてもどうしてもあの言葉の意味を探りたくなる。


先に言っておくけど、彼のことが気になってるなんてことは微塵もない。


私はただ、ホームルーム前やさっきの彼の言葉が引っかかるだけ。


知り合いなんてひとりもいないはずのこの街。


それなのに、私を知っているってどういうことだろうか。


それに、横から割り込んで会話に入って来た女子、桜庭さん、だったっけ。

彼女、絶対黒崎くんのことが好きだ。

これ系のことは敏感になっているから、嫌でもわかる。

学校でうまくやっていくために、誰が誰を好きなのか、それをいち早く感づくことが一番大切なこと。

これは、東京の学校で学んだことだ。


転校初日は、このことだけで頭がいっぱいだった。


だけどとりあえずは、何事もなく初日を終えることができて、胸をなでおろした。