彼のしつこさに耐えかねていると、突然教室のドアが大きな音で開き、彼の興味が私からドアの方に移った。
「お〜! 達也〜! どうした、今日はやけに早いじゃん〜」
よかった……。
やっと解放された……。
周りにバレないように小さくため息をつき、こわばっていた体の力を抜く。
だけど、私の後ろの席から物音がしてまた体が硬直した。
嫌な予感がしたから。
私の後ろの席は空席だった。
この席は、“彼”の物。
確認しなくたってわかる。
こんなに早く現れるなんて。
さっき廊下で会ったりしなければ、こんなに不安な気持ちになることはなかったのに。
せめて、私の名前を呼んだりしれなければ、こんな恐怖、感じなくて済んだのに……。
黒崎達也。
さっき先生が呼んでいた苗字と、今彼が呼んだ名前で“彼”のフルネームがわかった。
瀬戸くんは私の隣の席に戻ってきて、テンション高めに席についてまた話し始める。
「なぁなぁ達也。この子、転校生の古川さん! 転校生とか超久しぶりでテンション上がらね?」
あ〜もう、また……。
私の話はいいから、もうどこかに行ってよ。
「どうでもいいよ別に」