「古川さんって言うんだね。よろしく」
驚いて鼓動が乱れたけれど、平然を装って小さく頭を下げた。
「俺、瀬戸 キラ。わからないことがあったらなんでも聞いてね」
「ありがとう、ございます」
一応お礼だけは言っておくけど、聞くことはないと思う。
私に話しかけてきた男子は、廊下ですれ違った彼と同じように金髪に近い色に染めていて、彼もまただらしなく制服を着崩していた。
挨拶だけはかわしておくけど、これから先、“彼ら”とは関わり合わないと思う。
ぜひ、そうしたい。
朝のホームルームが終わると、教室内はまた騒がしさを戻した。
授業と授業の合間のこの10分程の時間が苦痛だ。
トイレに行くくらいしか時間の潰し方を知らないから。
だけど、転校早々トイレにこもるのも変な噂が立ちそうだから、私は意味もなくスクールバックの中をあさり、授業のチャイムを待った。
待ちたかったのに……。