私は、ドア横に立つ先生に軽く一礼してから運命の部屋へと歩みを進めた。
教室の中は、クラスメイトたちの熱気で暑かった。
東京とは違い、人数も少なく感じる。
私は控えめに視線を下げ、黒板の前に立った。
私ひとりだけ、違う制服。
転校前採寸はしたけれど、転校日までに間に合わず、仕上がるまで前の高校の制服を着て行くことになったんだ。
みんなと白いシャツの色は同じだけれど、私のスカートはグリーン系のチェック。この学校のスカートは紺色だった。
それに校則が違うからか、私のスカートが膝上なのに対してみんなは膝下のように見える。
それだけでも目立つ要因はあるのだから、しゃべり方や仕草などは誰の印象にも残らないように気をつけたい。
「東京から転校してきました、古川聖菜です。これから、よろしくお願いします」
自己紹介は、余計なことは言わずに短めに。
みんなに一礼したら、先生の指示を待ち、その通りに動くこと。
そうすれば浮くことなく無難に過ごせるから。
「古川の席は窓際の後ろから2番目の席な」
「はい」
先生が指差した先には、2つの空席があった。
ひとつは私の席。そして、その後ろにもうひとつ。
誰の席か確認しなくても、きっとさっき廊下で話しかけてきた彼の席なんだとわかる。
私は、机と机の狭い隙間をスクールバックが誰にもあたらないように胸に抱いて身を小さくして席まで進んだ。
スクールバックを机の横にかけ腰掛けると、隣の席の男子が早速声をかけてきた。