「舞…。」

寂しいなんて感情、絶対表には出さない。

出せる立場じゃない。



その時、宗太郎さんはあたしの頭を大きい手で触った。


この包み込むような手が大好き。


だけど指輪がついていると大好きな手も嫌いになる。


(指輪がついた手であたしに触れないでよ…。)


なんて心では思ってても、口が裂けても言えない。


言える立場じゃないから。


そして



そんな気持ちを持ってるあたしにお構い無しに



この人は何事もなくあたしにキスをする。

チュ


「またね。…楓とは必ず離婚するから。」


既婚者が良く言う台詞。



(嘘つき…。指輪つけている時点で別れる気なんてないくせに…。)


人間って本当、肝心な時に嘘がうまい。


パタン


そして宗太郎さんは帰って行った。


この窓に映る



紛れもなく眩しく晴れる太陽のように


さっさとあたしの前から去る。



優しいキスなんていらない。



いっそぼろぼろにあたしを使ってくれる方がまだマシだ。


そしたら、大嫌いになれるのに…。


あの人はどこまでもズルい。


でもそんなあの人を好きになっていつまでもズルズルと楽な関係でいるあたしは奥さんからしたらもっとズルい。


でもその関係を望んだのは全部あたし自身だ。