何に対しての 誰に対しての なぜありがとうなのか、全く分からない 口から出てきた言葉は、それだけだった 「じゃあね」 彼との会話は、ただそれだけだった 3月1日 何も言わず、式の際に隣に座っていてもそんな素振りも予兆もなかった 一言も会話をすることは無いまま、卒業式が終わって 彼が亡くなったと連絡がきたのはその日の夜のことだった 綺麗な、満月が輝く日だった