ライターで火をつけて、煙をふーっと吐き出した

紫煙は、車の中に溶け込んで見えなくなる

「俺の相手、してくれよ」

「分かってる、けど

ホテルの支配人ってそんなに忙しいのかな」

「忙しいよ

財政も立て直さなきゃいけねぇ、経営だってやっと右上がりになり始めたばかりだ」

吐き出した煙は、また車内に溶け込んでいって

灰皿で煙草をもみ消した

煙草の火のように、私もどこかに消えたかった

「おい、ケータイ鳴ってんぞ悠大から」