傍らの缶ビールに手を伸ばして、ごくごくと一気に飲み干す。

大雅に対してのやり切れない想いがうっかり顔を覗かせたから、ビールと一緒に体内に流し込むのだ。

そんなことは考えない、考えたくないのだ。

深く考えない代わりに、小説として書いて消化しているのだから。

空になった缶ビールをテーブルの隅にやって、パソコンのディスプレイに視線を戻すと、コタローくんから返信が表示されていた。

『月さん今、恋愛してないんですか?』

そういえば、彼とは色々な話をしているのに、恋愛の話だけは、全くしたことがなかった。

「うーん……してないかな」

当たり前のように大雅の顔が頭を過ぎったが、あれは恋愛ではないのだと自分に言い聞かせる。

『恋愛小説ばかり書くのに、意外ですね』

「してないから書くんじゃないのかな。コタローくんは?」

私が尋ねると、また少しだけ間が空いた。

『ねえ、月さん』

「なあに?」

また、少しの間。

そして、返ってきた彼の言葉を見て、私は目を丸くした。


『僕と、半年だけ、恋愛しませんか?』