私は最近、このコタローくんとのお喋りの時間が待ち遠しくて仕方ないのだ。

執筆が唯一の楽しみだったはずなのに、毎晩11時が近づくと、まるで恋人からの連絡を待つかのように、胸がソワソワしてくる。

どこの誰かもわからないから恋ではないけれど、恋によく似た気持ちだとは思う。

『話は変わりますけど、月さん』

「なあに?」

『今度のコンテストのテーマ、「世界の終わり」ですね』

私達が利用しているサイト、ムーンリバーでは、定期的に小説のコンテストを開催しているのだ。

「そうだね。コタローくんは出すの?」

『いいストーリーが浮かべば。月さんは?』

「うーん、私も浮かべば出すけど。難しいよね、世界の終わりって」

『ええ。どうしてもファンタジーになってしまいそうですよね』

「そうなの。ファンタジーは書けないしなー」

私の頭の中には、ファンタジー要素というものがきっと含まれていないのだ。

魔法だのドラゴンだの勇者だの妖怪だの、そういう世界は全く想像ができない。

夢がない人間だな、とつくづく思うが仕方ない。