「ふぅ」
「カズトさん。お疲れ様」
シロが駆け寄ってくる。
シロの腰に手を廻して。身体を引き寄せる。
シロにねぎらいの言葉をかけてから、状況把握をしているオリヴィエを呼ぶ。
「ありがとう。オリヴィエ!」
「はい」
「被害は?」
「ありません」
「よかった。小休憩を挟んでもう一度戦うぞ」
「はい」
すぐに浴場とトイレが用意される。
テントまでは必要ないと判断した。今回は何故か、カイとウミが甘えてくる。甘えていい大きさでは無いが、可愛いから許す。
簡単なスープをリーリアとステファナが作ってくれたので、食べる事にした。
その後で、風呂に入った。
風呂で汚れを落としてから、シロとお互いの身体を拭いてから、野営地に戻る。
『主様』
「どうした?」
エーファに身体を洗ってもらった、カイが近づいてきた。
『ご一緒してよろしいですか?』
「もちろんだよ。カイに向けて閉ざすドアは俺には無いからな」
『ありがとうございます。奥様もご一緒にどうぞ』
『あぁカイ兄。ばっかり、ウミもウミも!』
カイとウミが大きいまま、俺とシロを取り囲むように丸くなる。カイからしょうがないなという雰囲気がでて、カイはシロを包むように丸くなる。ウミが俺を包むようになった。
風呂で洗ってきたのだろう、ふかふかのモフモフにくるまれて、少し・・・。すごく幸せな気分になる。
エリンとアズリも近くに来ているので手招きする。
俺の横にエリンが寄り添う形になって、シロの横にアズリが寄り添う。
ステファナとレイニーは、オリヴィエとリーリアと後片付けをしている。
「マスター」
オリヴィエがライを連れてやってきた
片付けが終わったのだろう。
トイレだけ出している状況だ。
「ん?」
「どのくらいお休みになられますか?」
「そうだな・・・」
周りを見ると、やはり少し疲れているようだ。
「3時間見てくれ」
「かしこまりました」
「お前たちも適当に休んでくれよ」
「はい。武装の清掃が終わりましたら休ませていただきます」
「無理しなくていいからな。起きてからみんなでやってもいいからな」
「はい。かしこまりました」
あれはリーリアと手分けしてでも全員分を清掃するつもりだろうな。
無理をさせるつもりはないが、無理にやめさせるのも違うと思っている。
それにしても、カイとウミと一緒に寝るのも久しぶりだな。
最近は、シロと寝る事が多かったから遠慮していたのだろう。小さかったカイやウミも可愛いけど、大きくなったカイとウミも可愛いし、毛並みも最高だな。
安全なネコ科の大型な魔物を枕にして寝る事ができるなんて最高な贅沢だろうな。
寒くはないが、皆で集まって寝るのもいいな。
仮眠を取る時にはこうして寝るのがいいかもしれないな。
眷属たちとのコミュニケーションは大事だな。それに、このモフモフは癒やされる。シロはすでにカイに身体を預けて夢の世界に旅立っている。エリンも同じだ。アズリは寝なくても大丈夫なのだろうけど、シロに寄り添って目を閉じている。長き時を生きている?リッチでも精神が姿に影響されていて、子どものようになってしまう事があるようだ。
俺も、ウミに寄りかかりながら目を閉じた。
ウミのしっぽが身体に巻き付いてきて、暖かくて柔らかくて最高な手触りで最高の睡眠を約束してくれそうだ。
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「ご主人様」
「おっリーリア。時間か?」
周りを見ると、眷属は起きて準備をしているようだ。
シロとエリンはまだ寝ている。アズリは寝たフリをしているのだろう。
「はい」
「そうか、シロとエリンとアズリを起こしてくれ、ウミ。カイ。ありがとうな。また頼むけど大丈夫か?」
『もちろん!』『はい。いつでも言ってください』
ウミが間髪入れずに返事をしてくれる。
心なしか嬉しそうにしているので、今後も頼む事にする。
さて、5階層で戦闘を続けるか、6階層に向かうかを考えたほうが良さそうだな。
「オリヴィエ。このまま5階層で戦うのと、6階層に向かうのではどっちがいい?」
「6階層にはいずれ向かうのはわかっているのですが、レベル5のスキルカードは必要になる物が多いので、しばらくは5階層で戦うのも良いかと思います」
「そうだよな。今回も同じような感じだよな?」
「はい。4階層と同じように、使ったスキルカードが出やすい傾向にあるようです」
「わかった。念話や治療が出ればいいけど、出ていないよな?」
「はい。念話も治療も出ていません。収納も1枚だけしか出ていません。結界と障壁と防壁も一枚も出ていません」
「そうか、殆どが攻撃系と下位のスキルカードか?」
「はい。下位のスキルカードのレベル5版です」
「うーん。微妙だな」
「はい。ですが、氷弾や雷弾や爆炎や爆岩や爆水は貴重ですし、拘束や停止や振動は出てきています」
「わかった。戦力的には大丈夫だよな?」
「そうですね。少し戦い方を変えたほうが武装の損耗がすくなくなると思います」
「どうしたらいいと思う?」
俺の腹案もあるが、オリヴィエが考えた作戦を実行してみる事にした。
起き出したシロを交えて、オリヴィエ考案をベースにした作戦を実行してみる事にした。
それほど奇をてらった作戦ではない。
魔物の出現場所は特定できているので、その場所を囲うように冊を作ってしまおうという物だ。
その上で、リザードマンを先に倒して、オークとゴブリンとコボルトをそれぞれ倒していくという作戦だ。
訂正したのは、レッチェとレッシュとエルマンとエステルが上空から遠隔攻撃ができる上位種の牽制役とする事が追加で決定した。
スキル土を使って冊を作る練習を何度か行って、問題はなさそうという事になったので、魔法陣を出す事にする。すでに扉は閉められているので、残っていたエルマンとエステルが飛び立てば魔法陣が出現するはずだ。
「オリヴィエ」
「はい!リーリア。エーファ」
問題なく冊はできそうだ。
微調整が必要な感じはするけど、やってみないと不都合な部分を見つける事もできない。
これで上手く分離できれば、戦いはかなり楽になる。
「カイ。ウミ!」
『はい』『わかった!』
カイとウミがエリンとアズリを乗せて、リザードマンに肉薄する。
「シロ。行くぞ!」
「はい!」
シロと2人で並んでカイとウミが開けた穴に突っ込んでいく。残敵を倒していく、作業のようになってしまっている。
すでに、カイとウミは進化体との戦闘を開始している。カイとウミとエリンとアズリが進化体を足止めしている間に、他のリザードマンを倒していく、ステファナとリーリアからのスキルによる援助と攻撃が有効てきに作用している。
リザードマンの掃討が終わった。
「カイとウミとエリンとアズリは、そのままコボルトを頼む」
『はい』『わかった』
「うん」「了解!」
俺とシロはリザードマンが残っていないことを確認した。
神殿に入ってから、倒した魔物がダンジョン?に吸収されるので、生き残りが居るか確認するのが楽になっている。リザードマンが残っていないことを確認した。
「オリヴィエ。レイニー。俺に続け、オークを倒すぞ」
「はい」「はい」
シロは俺の横でうなずいている。
「シロ。ステファナ。リーリア。スキルで攻撃」
「はい」
「ご主人様。援護は?」
「必要ない。それよりも数を減らす事を考えろ」
「はい!」
俺の左右をオリヴィエとレイニーが守る形になる。俺を中心にオークに肉薄する。すぐ後ろに、シロを中心にステファナとリーリアが続く。その後ろをエーファが率いる眷属が討ちもらした敵を倒しながら続く。
全体的な戦闘時間は伸びているが、負担は少ないように感じる。
後でしっかりと検証しなければわからないが、この戦い方のほうが俺たちに合っているように思える。
俺達がオークを倒し終わる頃には、カイとウミとエリンとアズリはコボルトを倒し終わっている。
ゴブリンは、前後から挟撃する形になる。頭上からはレッチェ、レッシュ、エルマン、エステルが攻撃を開始するので、すぐに終了した。
石壁を残したまま。魔法陣を出したらどうなるのかを確認する事にした。
ステファナとレイニーが空いている扉を閉めると、問題なく魔法陣が現れた。
これなら連戦しても大丈夫だ。同じ作戦が通用する。
突撃するタイミングや使うスキルを限定するなど、いくつかのパターンで戦いを行った。
5回連続で戦った後で長めの休憩を入れる事になった。
トイレをゴブリンの部屋に設置して、浴場をリザードマンの部屋に設置する。
テントと食事はオークの部屋だ。
岩壁一つあるだけでトイレや浴場が少しだけ入りやすくなっている様だ。
前回は、カイとウミに包まって寝たのだが、今回はテントを出して手足を伸ばして寝る事にした。
エリンとアズリは、カイとウミに包まって寝たいという事なので、カイとウミがOKなら問題ないとした。
「オリヴィエ。消耗の具合はどうだ?」
「問題なさそうです」
「わかった。でも、エーファが使っている苦無は整備したほうが良さそうだから、持ってきておいてくれ」
「かしこまりました。他には?」
「そうだな。魔核の減り具合を見るスキル道具が作られないか考えてくれ」
「アズリと相談します」
「そうしてくれ」
武器につける形でスキルを発動できるようにしているのだが、魔核がすり減っていく事実が判明した。魔力は供給されているが、突然スキルが発動しなくなるのだ。もちろん、俺が武器に固定したスキルでは問題ないのだが、スキルスロットが空いている魔核につけて、魔力を提供する形で発動している場合に、消耗して、突然使えなくなる。
崖があるように突然使えなくなるので、戦闘中に発生した場合に戦略が崩れてしまう事になる。
有効な対策がない状態なので、同じスキルを付与した魔核を複数持ってもらう事で対応してもらっているが、俺達のように収納が使える物ばかりではない。そのときには、魔核を持つ方法も考えなければならない。
まずは、オリヴィエとレイニーに魔核がすり減る現象の発生原因を調べてもらっている。
同時に、メンテナンス時に魔核のすり減りを調べる方法を考えてもらっている。俺とオリヴィエとレイニーの推察では、魔核内の魔力がなくなっている事に依存しているのではないかと思っている。
その他でも、スキルカードと魔核の関係がわかってきた。
スキルカードは、詠唱して魔力を流す事で発動するのが一般的な使い方だ。魔核は、それを省略できる物だと考えていたのだが、どうやら、魔核は発動状態のスキルを保持していると思われる。
それでなければ、魔核からの発動時にも同じように詠唱しなければならなくなってしまう。
これは、眷属が魔核を利用してスキルを発動できている事から判明した。
今、実験的に低レベルの魔核にスキルを付与して、眷属たちが使っている。
魔核のレベルとスキルカードのレベルと発動回数の相関があるかを調べている。これが解れば、武器につける魔核のすり減りを予測する事ができる。
オリヴィエは魔核を調べる事で、すり減りを検知する方法を考えてもらっていて、俺はすり減ってしまう時期の予測を立てる事を考えている。
「カズトさん」
「そうだな。あまり考えても良い事はないな」
「はい。お休みになりますか?」
「もう少しだけ武器の調整をしてから休むよ。シロは先に休んでいてくれよ」
「いえ、お手伝いいたします。それに・・・」
「それに?」
「ずるいです。わかっていらっしゃるのに・・・」
「ハハハ。シロ。防具の清掃を頼む。その時に、傷んでいる箇所や傷がついている箇所がないか見てくれ」
「わかりました」
「それが終わった、もう一度風呂に入って身体を温めてから寝るか?」
「はい!」
戦闘能力が上がってきているのか、回避がうまくなっているのか、防具への傷は殆どなかった。
結界が上手く作動していたのかもしれない。皆の防具には結界と障壁と防壁のスキルが発動するようにしている。防具に直接付けた物は、すり減らないのか使えなくなる現象は発生していない。
使えなくなる条件がわからないから困ってしまう。
IoTじゃないけど、ビッグデータを処理できる異能が欲しい。
母数が少ないから共通点を見つけられていないのだろう。共通点さえ見つかれば問題点の洗い出しができる。個体差が出ているのなら余計に母数が少ないと調べる事もできない。アプリケーションのリリース後に問題がでる場合には、端末の個体差が影響する事が多いのだが、その状況と似ている。攻略までに目処が立たなければ、スーンたちに協力を求めて、データとパターンの割り出しを行う事にしよう。
風呂で身体を温めて、全裸のシロを抱きしめながら今日も目を閉じた。
だんだんシロの遠慮がなくなってきているのが心配だが、抵抗する事ができない俺が全て悪いのだろう。惚れた女に迫られて最後の一線だけは維持している俺は偉いと思う。思うのがだが・・・。
どうなのだろう?ヘタレか?