「んー……」

タケちゃんと家でしか会わないから外出するなんて考えられなかった。

「じゃあ図書館」
「勉強を忘れたいから遊びに行きたいのに」

クスクス笑う。そういう目的かと納得する。

ふとタケちゃんと行った夏祭りを思い出した。
あれはまだわたしが中2で、タケちゃんが中3。
まだこんな関係になる前の、あどけないわたし達。
二人きりで出掛けることがなかったから、少しよそよそしかったけど、楽しかったな。
はぐれそうになったわたしの手を引いてタケちゃんが歩くものだから、びっくりしたっけ。
まだキスとかそういうものを知らないわたしには、すごく大きな出来事だった。

「じゃあお祭り」
「お祭り? 随分先だな」と、笑った。

「夏はすぐだよ」
「すぐかな」と呟く。

「うん。すぐ」
「じゃあ約束」

どんな形でもいいから、一緒にいようと思った。
タケちゃんは、有村先輩が柊碧人に告白されたこと知っているのかな?
そう思ったけど、やっぱりそれは、訊けなかった。