千夜子は5才の時から祖母と二人暮らしだった。
多忙だった両親が母の田舎に千夜子を預け、その数年後に離婚した。

千夜子は両親が自分を不要だと思っていることを幼いながらに理解していたので、そのまま両親から養育費を貰って祖母とずっと二人で暮らしてきた。

祖母が昨年亡くなった時には母も父も申し訳程度に葬儀に来ていたが、どちらも千夜子を引き取るとは言わなかった。

二人はそれぞれに新しい生活があり、新しい家族がいたからだ。

高校を卒業するまでの金銭的な援助はすると約束してくれたので、千夜子はそのまま祖母が遺言書で残してくれた古い小さな家とわずかな遺産を相続して暮らしている。

たとえ両親のどちらかが千夜子と暮らすと言ったとしても、千夜子がこの家やこの町を離れることはできなかっただろう。

あやかし達がそれを許さなかったはずだ。

彼らは妙子の通夜にも葬儀にもきちんと参列し、両親と再会した千夜子のすぐとなりにいて二人をにらみつけていたのだから……。