授業が終わりざわざわと帰り支度が始まった教室で千夜子はひとりこっそりとため息をつく。

神社への呼び出しがどんな用件なのか?
またあやかし達の厄介事にまきこまれてしまうのではないか?

不安を感じるものの、同時にちょっと期待もする。

あやかし達が千夜子を頼ってくれるのを嬉しいと思うからだ。

ほんの些細な事でも誰かに頼られて必要とされることは嬉しい。

小さな頃にはそれこそ、のどに小骨が刺さったから取ってくれ!と猫又に泣きつかれたり。

転んでひざをすりむいたから助けてほしい!とからかさお化けに懇願されたこともある。

本当に些細な事だが彼らには千夜子の小さな手が救いだったのだ。

自分たちを見ることができて、触れる事までできる人間は貴重なのだそうだ。

この町でちょっと不思議なあやかし達を見ることができる人間は千夜子と亡くなった祖母の妙子だけだった。