僕の名前は渋崎健太(しぶさき-けんた)。
まだ18歳の高校3年生だ。
そんな僕に、ハイデスとやらは訊いた。
――やり残したことがないか、と。
ない、と答えられるはずがない。
お酒だって飲んでみたいし、車の運転だってしてみたい。それにまだ彼女だっていた事がない。
そんな僕にやり残したことがないか、だって?
あるに決まってるだろ。
「その顔、どうやらやり残したことはいっぱいあるみたいだね」
ハイデスは小さく微笑み、僕の周りを1周する。そして、小さく言う。
「全部を叶えてあげることは出来ないかもしれない。でも、君がやろうと思えば出来るはずだよ」
「どういう……」
ハイデスの含みのある言葉に、僕は訝しげな表情を浮かべる。
「悪魔の権限で、君を1週間だけ生き返らせてあげる」
「えっ……?」
生き返る……?
それってどういう……。
「そのままの意味だよ。生死猶予として1週間をあげるってこと。この1週間で君がやり残したことをやればいい」
ハイデスは口元を緩め、優しげに微笑んだ。そして次の瞬間、僕は自室のベッドで目覚めた。