「ゆづちゃんの妹ちゃんか。偶然だね」
「そうですね」
「学校帰りなの?」
「あ、はい」

「ハロー」と後ろから声がして振りむくと、渋谷と同じ制服の男子数人がこちらに向かってくる。

「ハロー、何ナンパしてんの中学生?」とからかうような口調で声をかけてくる。

「ナンパしてねーよ。ゆづちゃんの妹」
「え、妹? まじで。えー、可愛いね」

軽い口調で声をかけられるが、いかにも不良といった彼に対し、美織は好意的な感情が生まれず聞き流した。

「ゆづちゃんって誰すか?」と後輩が尋ねると
「ハローの彼女」と渋谷が答えると、さっきと言ってることが違うとハローくんを睨んだ。

「いや、彼女じゃないって」とハローくんが言いかけると
「ハローさん彼女いたんですか」と後輩がハイテンションで尋ねるから、彼の声が消されてしまう。

「そうそう」とおかしそうに渋谷も同調する。
「どこで出会ったんすか」
「出会いはよくわかんねーけど。な、一緒にダブルデートしたしな」
「あれは文化祭に一緒に行っただけだろ」
「えーでもさ、二人だけにしてやったじゃん。あんとき色々あったんだろ」
「ねーし」
「え、色々ってなんすか。俺、ハローさんのことなんでも知りたいんすけど」
「じゃあ俺が教えてやるよ。柚月ちゃんっていう平定の子で……」
「黙れ、渋。今すぐ殺す」

その様子を黙って見ていた美織が真に受けたようで「やっぱり付き合ってるんだ」と呟いた。