「……違う。お姉ちゃん、それ違うよ」

そう言われてハッとする。
美織の顔が歪み、柚月は自分は言ってはいけないことを言ったのだと自覚した。

「私は、駅前であの人を見かけたことがあるだけだよ」
「あ、そうなんだ。そういえば附学の人駅で見かけたとか話してたもんね」
誤魔化したつもりが
「お姉ちゃん、もしかしてまた?」
「ごめん、なんでもない。気にしないで」
「だって、そしたらさ……」
「本当になんでもないから。気にしないで」

ドアが開くと、柚月は逃げるようにエレベーターを降りた。