「え? 何?」
「なんでもない。それより何時からだっけ?」
「6時だよ」
「じゃあ、5時半くらいに駅で待ち合わせする?」
「うん。いいよ」
柚月の住むマンションの近くに来ると、正面に美織がいて
「お姉ちゃん」
と呼んだ。
「あ、美織。この前、話した妹」
こっちを伺うように立ち止まる美織の様子に気がついて
「ここまでで大丈夫だよ。送ってくれて、本当にありがとう」
「うん。じゃあ、来週ね」
「気を付けてね」
「うん。バイバイ」
と手を振って別れた。
エントランスで美織と一緒になる。
柚月が気まずい雰囲気を感じているのは、以前、附学の生徒が嫌だと美織が言っていたし、柚月自身も不良には近づかないようにと言ったことを思い出していたからだ。
不良じゃないからねと言いわけするのもおかしいし、
「どこか行ってたの?」と尋ねる。
「コンビニ」と素っ気なく答えて、エレベーターに乗り込んだ。