柚月はまた会えるかもしれない嬉しさに胸がいっぱいになる。
公園に着くと、柵に腕を乗せ海を眺めるハローくんの後ろ姿を見つけた。
「ハローくん」
と柚月が声をかけるとゆっくり振り返る。
夕日から伸びた光の脚が水面や彼を照らしていて、綺麗と柚月は見惚れた。
「あれ、どうしたの?」
「写メ、綺麗だったから見に来ちゃった」
「そうなんだ」
柚月は隣に並び、
「本当に夕日綺麗だね」
「でしょ」
とハローくんは得意げに笑う。
「海も綺麗」
「だね。ゆづちゃん、海、好き? 俺、泳げないけど好きだよ」
「泳げないの?」
「うん。去年も海に行って浅瀬で溺れかけた」と笑う。
通りすがりの少年に助けてもらったと。
「えっ? 少年?」
「うん。小学生くらいのチビ」
「普通、逆じゃない」
柚月が笑うと
「そうかな? 子供だって出来るよ」
「そうだね。実際助けてもらったんだしね。私は……海……」
好きか嫌いか言いかけて詰まる。
昔は海が嫌いだったから、海水浴に行っても泳ぐこともしなかった。だけど最近の私は……私はどうなんだろう。
考え出すと胸が重くなり、柚月は話を変えた。
「あ、じゃあ沖縄の海ならいいんじゃない? 遠浅で波も穏やかだったから、ハローくんでも楽しく遊べそう」
「……沖縄か。小さい頃行ったことあるみたいだけど、記憶にないから行ってみたいな」
「……小さい頃? 何歳くらい?」
「んー? 1歳とか2歳とかそんくらいかな」
「そっか」
柚月は一瞬、夢に出てきた離島でハローくんと会ったことがあるのかもしれないと期待したけど、そんな小さい頃の記憶が自分の中で懐かしさを感じるくらいに覚えている自信はないし、きっと違うだろうと肩を落とした