週末、
「柚月ちゃん、またあの子来てるよ」
鹿石さんが目配せして知らせる。

前回の来店同様にガラス窓から中をのぞく人影があった。ハローくんだと気づいて柚月はクスリと笑ってしまう。
本当に来てくれたことも胸をくすぐらせた。

「やっほー」
「いらっしゃいませ」
「期間限定の買いに来たよ」
「はい」

お会計をしていると

「ゆづちゃんバイト何時なの?」
「えっと3時だよ」
「すぐだね。バイト終わったら暇?」
「え、あ、うん」
「じゃあさ、少し遊ばない? いつものお礼したいし」
「お礼って……でも」

ハローくんは注文し受け取ると「じゃあ駅前で待ってるね」と出て行った。

時間丁度にあがり、鏡で身だしなみを整えなおしていると、休憩中だった鹿石さんが「デートなんでしょ」とにんまり笑った。

「ちょっとおいで」と手招きし、柚月を向かい合うように座らせると化粧直ししてあげるからと魔法をかけるような手つきで施してくれた。

待ち合わせ場所に近づくと、人の流れを見るように壁に寄りかかりながらハローくんが立っていた。

鹿石さんからデート楽しんでねと言われたものだから、やっぱりこれはデートなのかなと意識してならない。

柚月に気づいて目が合うと微笑む。

「ごめんね。お待たせしました」
「ううん。待ってる時間もなんか楽しかったよ」
「え?」
「ハロウィンの飾り可愛いし、なんかね街行く人が明るく見えたから」
「ああ、そうだね。可愛いよね。ハロウィンの飾りいっぱいだもんね。雑貨とか見たいな」
何気なく言うと
「いいよ。見に行こうか」
と提案した。

駅近くの大型複合施設に入っている雑貨屋に行くと、ハロウィンコーナーが設けられていた。

ハローくんは「うげ。気持ち悪い」と言いながら、ゾンビの被り物を手にすると自分の顔に合わせる。
付き合ってあげているというより、買い物を彼も楽しんでいるようで柚月はホッとした気持ちになった。