「はいはい」
「でも意外だな。柚月、男に興味ないと思ってたから」
「えっ?」
「彼氏欲しいとかあるの?」
考えたことがないといえば嘘になるけど、湖夏のように紹介してとお願いする程の欲求があるわけではない。
彼氏と手を繋いで歩いたり、映画や遊園地でデートをする。
その相手をハローくんだと想像すると、なぜか顔が熱くなる。恥ずかしいけど、嫌ではない。
「欲しくないわけじゃないかな」
「ふうん」
「で、そういう宏くんは? 告られたりしてるんでしょ? バド部の子に」
「はっ?」
「やっぱり告られたんだ、その顔!」
反撃とばかりに得意になって冷やかすと
「はいはい」
と軽くあしらわれた。
自分のことは言いたくないようでつまらない。
「人に訊くくせに、自分のこと言わないのダメだよ。ていうか、なんで付き合わなかったの?」
「それは、好きな子と付き合いたいからに決まってるだろ」
真っ直ぐ柚月を見つめて言った。
それはそうか。告白してきた子が好きな子とは限らない。中には好きじゃなくても付き合ってみるという人もいるようだけど、そうではないらしい。
むしろ、そう言いきるということは今、好きな子がいるということだと柚月は納得する。
「そうなんだ。宏くん、好きな子いたんだね。同じ学校の子なの?」
「はっ?」
信じられないといった顔をした。
「えっ? そういうことでしょ?」
柚月はきょとんとする。
須長くんは「バカ」と呟いた。
「えっ、バカ? 」
呆れたように溜め息をつくと「先行くわ」と行ってしまった。