「あ、あの……私、ハローくんとどこかで会ったような気がするだけど、以前会ったことありますか?」
じっと柚月の顔を見て「んー? ないんじゃないかな」と彼はあっさり答えた。
やっぱりそうか。今回もそうだったのかと肩を落としつつ、もう一つ聞きたいこともあったけど、さすがにそれは口には出せなかった。
簡単に訊ける問題ではないと理解している。
「そっか。ごめんね。変なこと聞いて。忘れて下さい」
「ううん。そういえばゆづちゃんって何年生なの?」
「二年」
「俺も二年」
「あ、タメなんだ」
「みたいだね。ゆづちゃん、平定(ヘイテイ)高校でしょ?」
「うん」
「じゃあもしかして俺、平定に知り合いがいて、学校の近くに遊びに行ってたことがあるから、そのとき知らないうちに会ってたのかな」
「え、そうなんだ。知り合いがいるんだ。じゃあそのときに見かけたのかもしれないね」
柚月にとってはそういうことではないのだけど、合わせるように頷いた。
突然ハローくんがくしゃみをするから柚月はおかしくて笑った。
「夜は少し寒いね」
「確かに。日中ならあそこの芝生で日向ぼっこしたいなー」と大きく伸びをした。
「いいね。芝生の上に寝転びたいね。お弁当でも持って」
「ピクニックだね。気持ち良さそう」
「じゃあ今度ここでお弁当もって集合しちゃう?」と柚月が冗談半分、のってくれたら嬉しい気持ちも半分込めて訊いてみた。
それは勿論、彼と自然に仲良くなれれば、デリケートな問題でも訊くことができるようになれるかもしれないという期待もあった。