そこでハローくんのお家が隣の駅から近いことや、たまにここの辺に買い物に来たりしていることを知る。途中で、柚月は自動販売機を見つけ、
「ちょっと待って」
ホットレモンを購入し、はいと差し出す。
「え?」
「あ、嫌いだった?」
「ううん」
「待たせたお詫び」
「返し忘れたの俺だし」
柚月が首を横に振ると、ハローくんはじゃあ、ありがとうと受け取った。
この前のベンチに座る。海風が冷たさを増していて、柚月は巻いていたマフラーに顎をうずめた。
「夜に来るの久しぶりだな。この前は明るかったから」と柚月は嬉しそうに微笑む。
「俺、たまに夜くるんだよね。なんも考えなくてすむっていうか、ボーッとしたいとき」
「ボーッとしたいときがあるんだ」
尋ねたことに答えない代わりにハローくんはいただきますとホットレモンを飲んだ。うまいと言ってから、柚月に「飲む?」と手渡した。
「え?」
「おいしかったから」
「あ、でも大丈夫」
咄嗟のことで柚月は動揺しながら、断る。
「俺、いつも何かもらってるね」
「あれ、そうかな」
「二分の二だよ」
「じゃあ一ってことか」
二分の二と言われて、やっぱりハローくんは柚月に会ったことはないんだと思う。
だけど思い切って尋ねた。