「あ、寒いのに、ごめんなさい。ありがとうございます。そういえば名前も聞いてなかったような」
「俺? ハロー」と自己紹介する。
「ハロー? ハローくん? あだ名?」
「うん、そんな感じ」
「可愛いあだ名だね」
「ありがと。あ、あとお花もありがとう。まだ飾ってるから」
「あ、天使いた?」
「うん。いる気がする」
「良かった」
湖夏に彼は虐められてるんじゃないかなんて言われたことが気になっていたけど、すっきりした笑顔に嬉しくなる。
もう少しだけ話をしたいなと思ってみるが、言葉が出てこない。
仲良くなるチャンスだと自分に言い聞かせ、少し考えてからようやく
「あ……と、もう帰るの?」
「うん。ちょっと散歩して帰る」
「え? 散歩? そんな趣味あるんだ」
と柚月は笑う。
「え、意外?」
「うん。なんか散歩っておじいちゃんみたい」
「犬の次はおじいちゃんか」
「あ、悪口じゃないよ」
「うん、わかってる。ゆづちゃんは家に帰るところ?」
「うん。帰るつもりでいたけど、お散歩いいね。夜に散歩したことないから、私も散歩して帰ろうかな」
一緒に行きたいと考えたけど提案できない。
「じゃあ、ゆづちゃんも行く? 散歩って行ってもそこの公園に行くくらいだけど」
「あっ……じゃあ、行きます」
即答した。