「あ、そういえば春から軽く聞いたけど、柚月ちゃん、心臓のほうが良くなかったんだって?」

保奈美さんは花の水の入れ換えをしながら声をかける。突然で驚きながらも
「あ、はい。え……と、そうなんです。私、心臓に疾患があって、それで中一のときに心臓移植をしたんです。で、今回はその影響で体調崩してしまって」
「そっか。大変だったね。中一か……」

呟くと急に保奈美さんの表情が険しくなった。

「保奈美さん?」
「あ、ううん。ちょっと私の古い知り合いに、脳死して臓器提供したっていう人がいたから、身近にね、こうして移植して助かってる人がいるんだなって思って、少し驚いちゃって。
しかも同じくらいの時期だったからさ」
「え?」
「……まあ詳しく知らないんだけどね。
別れてから会ってないし、人伝えでそんな死に方したって、聞いただけだから」

心臓が柚月が思っていることは当たっているというように、早鐘を打つ。

ハローくんは、身近に臓器提供をした人はいないと言っていた。あれはきっと嘘ではなかったはずだ。

だったら――。