ハローくんは恐怖や心細さを感じていたのだろうと、その肩を抱き締めたくなった。
だけどここに来る前に決めたことを思い出し自制する。
そんなことより元はと言えば原因は自分であるし、この前のことも詫びなければいけない。
「ごめん、ゆづちゃん、本当に」
「ううん、大丈夫」
「怪我してない?」
「うん、全然。何もされなかった。それより」
ありがとうと言いかけると、涙で喉が詰まった。

気丈に振る舞おうとしているのがわかると、もう理性で抑えるのは無理で、
「ゆづちゃん、抱きしめていい?」
「え?」
返事を待つ間もなく、軽く両腕で抱きしめた。
それから向き合うと、柚月は照れくさそうな笑顔を向けた。
それを見て、ああ、好きなんだなとハローくんは自分の気持ちを自覚してしまった。
だから尚更、ここで終わりにしなければいけないとも思えた。
自分のせいで好きな子に怖い思いをさせるなんて、本当はもう二度としたくなかった。

柚月は、彼を見つめていると、朝芽先輩とのやりとりが思い浮かんでくる。

『柚月ちゃんは、どっちが本当のハローくんだと思うのかの?』
『優しいハローくんです』
『じゃあ伝えたら。柚月ちゃんだってわかってるんだもん。本当にわかってる人が伝えるべきなんだよ。あたしのすることじゃないから。伝えてあげて』

さっきまで感じていた自信のなさなど頭になく、ただ自然に
「ハローくん、私、ハローくんに話したいことがあったんだ」
と切り出していた。
抱きしめられたときに、内側に感じた温かさのせいかもしれない。

「話したいこと?」
「うん。私ね、ハローくんに誰の人生を生きてるの? って言われたとき、少しドキッとしちゃった。
私、誰の人生を生きてるんだろうねって思うことが実は沢山あって。
それが見透かされたような言葉だったから。
でもね、私、ハローくんと出会って少しだけわかってきたんだ。
例えばね、ハローくんに今感じてる気持ちとか。
これは私なんだって、はっきりわかる。自信あるよ。
ハローくんは、そうやって知らない私に気づかせてくれる人なの。
すごく嬉しい。ありがとう」