柚月はぼんやりこの前の出来事を思い返していた。

思えば怒りを感じたことは今まで何回もあった。
だけど、怒ることはいけないこと、そう感じていたから自分の中で燃やしてなかったことにしていた。それに笑顔で誤魔化せば大体のことは乗り越えてきていた。
だけど、ハローくんの話を聞いたときには、抑えられなかった。
ああいう抑えきれない感情が、喧嘩になるということだろう。
でもやっぱり、手を出してはいけない。
怒っても手を出しては――その思いは変わらなかった。

『ゆづちゃんは、誰の人生を生きているの?』

ハローくんの蔑んだような視線が忘れられない。

私はただ浮かれていただけだったのかな。
好きという感情を知って、自分を見つけたような気持ちになっていただけだったのかな。

休み時間に売店に行った際も、須長くんとすれ違ったにも関わらず、お互い声をかけなかった。
柚月としては、前みたいな友達として話したいと思っているけど、それはきっと都合のいい話なんだと自覚する。

謝りに行こうとも思ったけど、告白に対して忘れてと言われたのだから、もうなかったことにしたいのかもしれない。

須長くんとも急に友達でいれなくなったことが、柚月の気持ちをさらに暗いものにした。