結局、どう受け止めていいかわからなくなり
「ゆづちゃんが俺と仲良くなるの嫌だったら、もう会わないよ」
「え?」
「無理させてるとかそういうことなのかとも思ったんだ」
「……無理させてるわけないじゃん。そういこと言わないで」

柚月の顔が一気に曇る。さっきまでの楽しい雰囲気が台無しになるような一言だった。

さっきまでぐちゃぐちゃ頭で考えていたことは全て柚月の本心ではなく、美織が勝手に決めつけていたことかもしれない。
そればかりに気をとられて、今日一緒に過ごしている間、柚月ときちんと向き合えてもいなかった。
今言った言葉、なんとなく過ごしてしまった時間に後悔を感じて

「ごめん」
「……うん」

柚月も何と言っていいかわからず俯くと、アナウンスが彼女の降りる駅を告げる。

「ちょっとね、考えるんだ。俺さ、けっこう適当なことして人を傷つけることあるから」
柚月は、パッと顔を上げた。
傷つけるといったハローくんの顔のほうが傷ついているように見えた。

「そんなことない。私、一緒にいて嫌な思いしたことないし、むしろ、私、今まで知らなかった自分が知れて一緒にいると嬉しいよ」
思いがけない言葉だった。
「だから、自分を責めないで」

電車が停まり、周りの人が下車していく。
「あ、降りなきゃ」
慌てて立ち上がった柚月の腕をハローくんが掴むと、
「ありがとう」
「……うん。じゃあまたね」
「うん。またね」

ようやくお互い笑顔になれると、まるで鏡のように感じた。

ホームに降りて、ハローくんの乗った電車が見えなくなるまで見送る。
彼に掴まれた腕が、愛しさの余韻を残していた。