「ごめん、ゆづちゃん大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「とりあえずこのまま地下鉄乗ろっか」
「うん」
改札を抜けるとようやく乱れた息が落ち着いてきた。
「それにしても笑っただけで追ってくるってすごいね。びっくりしちゃった」
「……うん。そうだね」
ハローくんは追われたのは自分がいるせいだと自覚していたが、それを柚月に伝えるか迷い、結局歯切れ悪く答えた。
すぐに電車が来たので乗り込む。空いていたので、並んで座れた。
「ねえ、ゆづちゃん」
「うん?」
「この前、ゆづちゃんの妹ちゃんに偶然会ったよ」
「え、そうなの?」
「うん。向こうから挨拶してくれた」
「美織、なんも言ってなかったな」
結局、美織に言われたことが気になっていた。手術のことはなんとなく知らない振りをしていたほうがいい気がして伏せる。
「なんかミッチーみたいに俺とゆづちゃんが付き合っているかどうかってすごく気にしてたんだけど」
「え? そんなこと聞いてきたの? ごめんね」
「ううん。別にそれはいいんだけど。なんか俺とゆづちゃんが仲良くなるの嫌みたいだね。そんな風なこと言われたよ」
随分ストレートなことを言ったものだと柚月は絶句する。
「俺、あの子に何かした覚えもないんだけどさ。嫌われてるのかな」
「そんなことないと思うけど」
「喧嘩とか売られるからかなぁ」
「喧嘩って、さっきのはたまたまでしょ。仕方ないよ」
制服だけで不良と判断されるというのに、柚月は美織がいうように自分のことを不良という目で見ているわけではないらしい。
じゃあなんなんだろう。益々わからない。
一緒にいるときは好意的に見える柚月の態度も実際は違かったりするのか。
俺と仲良くする訳があると美織は言っていたが、本当にそうで、その為に明るく接しているのか。
それよりも無理して友達してるという言葉がいちばん引っ掛かっていた。