嬉しいは聞き流されてしまったようでほっとしたけど、意識して見られていないことに少しへこんだ。
二時間ほどして、映画の上映が終わった。
ファンタジーをベースにしたアクション映画で柚月としては面白かったが、ハローくんは途中から居眠りをしていた様子だった。
シネマを出て柚月が
「ハローくん、途中で寝てたでしょ」
「あ、バレてた? 暗くなると寝ちゃうんだよね」
くすくす柚月は笑う。取り繕わずに話すところが素直でいい。
「なんだっけ、あの……地図を手にいれるところまでは見てたんだけど、気づいたら海の中に沈められてるところでさー」
「え、じゃあ殆ど観てないね」
これからどうしようかと話していると、柚月は路地の片隅に高校生くらいの男子2人と中学生くらいの男子が向き合って話しているのが目についた。
高校生のほうが思い切り襟元を掴む。
喧嘩というよりカツアゲとかそういうことをされているようだった。
明らかに体格差もあり、小柄な彼はすっかり怯えているようで明らかに勝ち目はなさそうだ。
柚月が立ち止まるので振り返ると、ハローくんもそれに気が付き「カツアゲじゃん」と呟く。
「どうしよう」
助けたいと思ったけど、柚月にそんな力はない。
でも声をかけるべきだとも思う。
ハローくんは落ち着いた様子で
「ちょっと待ってて。着いてきちゃダメだよ」
と止めに行こうとしているのがわかって、咄嗟に彼の腕を掴んだ。
「ダメ」
ハローくんはそのまま振り返る。
「あ……ごめん。でも行っちゃ嫌だと思って。喧嘩とかしてほしくないし、巻き込まれてほしくないし……けど」
カツアゲされてる人のことを考えると、見過ごすこともできない。
「何かいい方法ないかな」
首をたれ、頭を捻るけど何も浮かばない。すると向こうからうわぁと小さな悲鳴がした。