「人殺しに『助けてくれ!!!』なんて言われてもねぇー。」
キセキはボウガンを男に向ける、男はもう反抗する気にすらなれないのか、口汚い言葉で彼女を罵倒するしかなかったが、それはあまりにも幼稚な内容だった。
「いいじゃねぇか!!!
どうせ此処に来る人なんて、最初から自殺目的なんだろ?!!
人なんていずれ死ぬのが常識だろ?!!
それを早めただけで何が悪いんだよ!!!
俺はあいつらの背中を押しただけだぞ!!!
自殺しようとしたあいつらの方が悪いんだよ!!!」

「・・・・・・・・・・。

・・・・・はぁー・・・・・。」

「・・・っ??!」
キセキは大きくため息を吐きながら、ボウガンのトリガーを引いた、しかしその放たれた矢は男には当たらず、男の頬をかすめて後ろの鉄骨に突き刺さる。
男は小さく悲鳴をあげながら、鉄骨に突き刺さった矢を恐る恐る見た、矢は鉄骨を簡単に突き刺さっている、鉄自体が老朽化している事もあるが、このボウガンの矢は特殊な作りになっているので、鉄だけではなく木にも簡単に突き刺さるのだ。
キセキが足で鉄骨を強く踏みつけると、金属特有の鈍い音と共に紙を手でちぎった様な音が少しだけ響く、それは紛れも無く、鉄道橋自体が崩れかけている証拠だった。
男は焦った、このままだと自分が落ちてしまうと思ったが、恐怖のあまり声が出ず、手をキセキに向けながら、手振りだけで自分の降参を伝え、命乞いをしようとしている。
今まで何人もの人の命を奪ってきた犯罪者が、だ。
「あなた、典型的な子供ね、他社の命は軽く見られるのに、自分の命となると プライドを捨てて、自分の罪は棚に上げたまま、反省するフリさえすれば助かると思ったの?
あなたが今まで散々奪っていた命達が可哀想に思えてくるわ、彼らはあなたよ りもよっぽど賢く、そして優しかった。
だから、周りにこれ以上迷惑をかけられない、自分が大切な人の足手まといになっているなんて嫌だ。
そう思った人達が、哀れにもこの地で自分の人生を終わらせて、生きている人々に少しでも楽をさせたいと思った、この気持ち、あなたに分かる?」

「・・・はぁ??」

「分からないでしょうね、人を簡単に傷つけたり、命を簡単に奪ってしまう人なんて、自分の事だけしか見えない、近眼なんだから、相手の事なんて目にも止めないくらいにね。」