「・・・・・けて・・・・・。

・・・たす・・・・・けて・・・。

・・・・・助けて・・・・・。」
突然鉄道橋の下側から声が聞こえた、その声から察すると、女の子の声だった、キセキは慌てて鉄道橋の上を歩きながら、声の主が何処にいるのか探す。
そして、キセキが鉄道橋を歩き回っている音に女の子が気づいたのか、叫ぶ様な大きな声で呼び始めた。
「すみませーん!!!ここでーす!!!
落ちそうなんです!!!助けてくださいー!!!」
鉄道橋の中央付近で、女の子の声が一番大きく聞こえる、恐らく鉄道橋の鉄骨部分に掴まっている状況なのだと思ったキセキは、レール部分でうつ伏せになった、そしてゆっくりと、鉄道橋の下部分を覗き込む。





グサッ!!!

「うぎゃあー!!!」



鉄道橋の下から伸びていた手にボウガンの矢が突き刺さる、そしてその手に持っていた銃が川に落ち、手の主はすぐさま手を引っ込めて体全体で痛みに耐えている。
手から大量に流れる血が滴り落ち、川にポタポタと落ちる、刺さっているボウガンの矢を抜こうとしたのだが、矢尻が特殊な形になっているのか、全く抜ける気配が無い。
むしろ強引に引き抜こうとすると、手の中の肉を傷つけ、さらに痛みが増してしまう、痛みで全く身動きができない「男」の横には、いつの間にかキセキが立っていた。
慌てた「男」はどうにか逃げようとしたのだが、高さに加えて手の痛みが邪魔をして、うまく体を動かせない、キセキは男性が痛みで悶えている間に、ジャングルジムを降りる様に鉄骨にぶら下がって、近くの足場に着地していたのだ。
そしてキセキの手にはボウガンが握られている、彼女の腰に巻いてあるウエストポーチから予備の矢が見える、男は痛みと恐怖で頭が混乱しているのか、攻撃を仕掛けたはずのキセキに助けを求める。
「なんっ!!!
・・・・・何だよ!!!
・・・・・誰だよお前!!!
痛いよ!!!助けてくれよ!!!」
男の顔は涙でグチャグチャになっている、まるで泣き喚いている子供の様だった、キセキはそんな男の顔を見下しながら尋問を始めた。
普通だったら、一度鉄道橋の上に連れて行ってから尋問するのだが、キセキはそんな面倒な事はしない、何故なら彼は普通の人間ではない、立派な「犯罪者」なのだから。
そんな人物に気配りや心遣いなんてしたくない、キセキだけではなく、誰だってそうだろう、彼はこの鉄道橋の下で人を待ち伏せして、音声アプリを使いおびき寄せ、相手が鉄道橋の下を覗き込んだ瞬間、その顔を持っていた銃で打ち抜き、人を故意に自殺させていたのだ。