「っ!!!」

後部座席に座っていた2人の女性の悲鳴が、突然鳴り止んだ、助手席と運転席に座っていた男性2人が後ろを振り返ると、女性2人は、山の入り口を向いたまま固まっていた。
男性2人も、恐る恐る女性2人が見ている場所を見た、すると男性2人は悲鳴をあげ、運転席に座っている男性はひたすら鍵を回す、だが助手席に座っている男性は、恐怖で体が動かなくなっていた。
4人が見たモノは、この肝試しの目玉でもあったのだが、想像を絶するその姿に、4人はただただ涙を流していた、そんな4人をあざ笑うかの様に、「ソレ」は車に近づいて来る。
頭からは血管が、まるで生き物の様にウジャウジャと動き、爪は全て剥がれ落ち、口からは血と吐瀉物が混じった液体が流れ、眼球は破裂して、そこから白いスライム状のナニかがボタボタ落ちていた。
「ソレ」は車に近づくと、車の窓に手を当てる、その窓近くに座っていた女性は気絶してしまい、「ソレ」はバラバラに生えている歯を見せながら笑っている。
運転席に座っている男性は、必死になって鍵を回し続けた反動で、とうとう鍵を差し込む部分が完全に壊れてしまう、男性はとにかく車を叩いたり蹴ったりもしたが、車はまるでその場から動かない無機質な鉄の塊と化していた。

「いやぁあああああああああ!!!」

後部座席から、まるで耳が張り裂けそうなほど大きな悲鳴が聞こえたと同時に、運転席に座っている男性の頬に、暖かい液体が飛び付いた。
足元を見ると、赤い鮮血がアクセルとブレーキ付近に向かって流れている、そして助手席に座っていた男性の頭を「ソレ」が掴み、強い力で握りしめている。
運転席に座っている男性が後ろを振り向くと、そこには目を疑いたくなるほど、無残にバラバラにされた女性2人の亡骸が座っていた、そしてそんな事をしている間に、助手席に座っていた男性の頭はバラバラになって吹き飛んでしまう。
「ソレ」がどうやって車の中に入り込んだのか、生き残った男性は全く想像できなかった、だが「ソレ」が、男性の胸を貫いた瞬間、ようやく理解できた。
後部座席に座っていた女性は、吐き気に襲われて窓を開けてしまったのだ、恐らく女性自身も、自分が一体どうしてこんな危険な事をやってしまったのか、分からないまま殺されたのだろう。
だが時は遅かった、残されたのは、血まみれの惨劇が詰め込まれた車、そして4人の遺体を引きずりながら山に戻る「ソレ」、かつて「ソレ」も「人間」だった事なんて、誰も考えられないほど変形してしまった体、そして心。
だがその事実は、「ソレ」自身も分からないのだろう、4人の遺体を崖下に放り投げ、奇声の様な笑い声を山に響かせた「ソレ」は、こう言った。





「・・・・・痛イヨ・・・・・助ケテクレヨ・・・・・」