「・・・・・おいで・・・。」
「っ?!!」
突然女性の一人が、聞き覚えの無い声を聞いた、しかもその声は鮮明且つはっきりと聞こえ、常に声がやまびこ状態になる山の中で聞こえたとは、にわかに考えられなかった。
その声は男性の様に聞こえたのだが、今目の前で動画を撮影している男性2人の声ではない事が、なんとなくだが女性には分かった、しかもその声は若干枯れかけ、正気を完全に失っている様に聞こえたのだ。
女性はこの事を皆に知らせたかったのだが、あまりの恐怖で声あおろか足も動かなかった、そして神経が完全に混乱している3人は、パニック状態に陥っている女性に全く気づいていない。
今思えば、今この瞬間に逃げ出していれば、「あんな大惨事」には至らなかったのかもしれない、もうすでに異変は起き始めていた、それを一番最初に気付いた女性の顔からは、ジワジワと冷や汗が滲み出ていた。
その女性の異変に気付いたのは、1人の男性だった、普段から穏やかな顔をしている女性の顔が異様なほど青ざめていたので、とりあえず声をかける事に。
「・・・おい、大丈夫か??」
「ちょっと、どうしたの?
顔色悪いよ?」
「なんだなんだ?怖くなって動けないのか??」
男性の一人が固まっている女性をからかうが、その女性の異変に気付いた男性も、耳に妙な音が入り込んでいる事に気付く、その音は明らかに、草を踏みしめている音だった。
だがこんな夜中に山の中を歩く人なんていない、ましてや此処は、人が入ってはいけない場所でもある、4人より先に来た先客かもしれないと男性は思ったが、それにしてはおかしい。
夜の山の中は暗闇に包まれ、光が一つでもないと歩く事は困難だ、無闇に歩くと、怪我をしたり遭難するリスクも高くなる、此処はあくまで山の中なのだから。
なのに、音がする方向を見ても、光なんて一切見えない、この暗闇の中なら、僅かな光でもすぐに認知できるのに、音だけが4人に向かって近づいて来ている様に聞こえたのだ。
男性はさすがに危険だと判断して、3人に帰る事を提案するが、2人だけがそれに反対した、2人の興奮は一向に冷めず、ますますヒートアップしている。
自分が今どんな危険な状況にいるのかさえも分からなくなった2人は、帰る事を提案した男性を「臆病者」呼ばわりしてからかい始めた。
恐怖と苛立ちが心を占拠した男性は、震えが止まらなくなっている女性の肩を持ち、来た道を真っ直ぐに下って行く、女性は2人も連れて行った方がいいと言ったが、男性は聞く耳を持たない。
足元がおぼつく女性の為に、男性はしっかりと女性の体を抱きかかえ、ゆっくりと山を下る、そして時間をかけ、車がようやく見えて、2人が安堵の表情を浮かべた、その時だった。
「きゃぁああああああああ!!!」
「うぁあああああああああ!!!」
上の方から、2人の叫びが聞こえた、せっかく車に辿り着いた2人の足は止まったが、後ろを振り返る事はできなかった、2人共恐怖で体が動かないのだ。
叫び声は明らかに、山の上に残った2人の声だったのだが、それは悲鳴とも驚愕とも思える、心の底から恐怖・驚愕している様子だった、恐怖心が若干和らいだ2人は、とりあえず車の中に逃げ込む。
幽霊だったとしても、大型の夜行生物だったとしても、2人にはもうどうしようもできない事態だったからだ、今この場ですぐ、山の上に残った2人を助けに行かなかったのは、ある意味正解だったのかもしれない。
車に乗り込んだ2人は、それぞれが山に残った2人にスマホで電話をかけたが、でる気配が無い、そこでようやく、自分たちが置かれている危険極まりない状況に気付いた2人。
だが車の運転席に座った男性は、諦めずに何度も電話をかけ続ける、女性は来た道をただジッと見守っていた、2人が「ドッキリでしたー!!」と、あどけない笑顔で帰って来る事を信じて。
しかしそんな女性の思いとは、少しだけ意に反した事が起きた、山の奥から、2人の走る音が聞こえて来るのだ、運転席に座った男性は鍵を開けて、走って来る2人がすぐに車に入って来られる様にした。
そして車に向かって猛ダッシュで走って来た2人の姿は、先程とは比べられないほど、酷く汚れていた、2人は裸足で、女性は髪を乱しながら走り、男性は涎を垂らしている。
走って来た2人は車に駆け寄ると、すぐにドアを開けて車中に飛び込んだ、先に車に乗っていた女性は、涙目になりながら息を切らしている女性の背中をさすった。
ブルブルと震えている女性は、背中をさすった女性に抱きつくと、大声で泣いていた、運転席に座った男性は、コンビニの袋の中から、自分が飲んだ飲みかけのスポーツドリンクを、助手席に飛び込んだ男性に渡す。
それを一気に飲み干した男性は、先に車に乗っていた2人に、とりあえず自分達の身に何が起こったのか話し始めた、後ろの席に座っている女性2人は、互いの手を握っていた。
2人が車に帰った後、残った2人は崖付近に近づくが、その時は何も起きなかった、だが2人がスリルを思う存分楽しんで、2人が待っている車に戻ろうとした、まさにその時だった。
山を下ろうとする女性の手を、誰かが掴んだのだ、だが女性は、てっきり隣で一緒に歩いている男性の悪ふざけだと思い、あえて何も言わなかったのだ。
しかし、その悪ふざけをしているであろう男性の方が、足を止めて隣の女性を見ていた、その態度に女性の心は一気に凍りつき、手を振り解こうとしたが、手ではなく首が動いてしまう。
そして女性が見たモノ、それは頭がグチャグチャになった男性が、血まみれの手で女性の手首を掴んで、こう言った。
「逃がさない・・・・・・・。」
驚いた2人は、とにかく山の麓に止めておいた車に逃げ、道を走らずに山を滑り落ち、今に至るらしい、山を滑り落ちた証拠に、2人の体のあちこちは泥まみれだった。
運転席に座っている男性は、とりあえず近くにあるコンビニに行って話と心を整理しようと、エンジンの鍵を回した。
「・・・・・・・??」
「・・・おい、どうしたんだ?」
「あっ・・・・・いや・・・・・。」
エンジンの鍵を回し、車が何度も雄叫びをあげているにも関わらず、全く動かない、運転席に座った男性は若干イライラしてしまい、ハンドルの中央に拳を入れた。
だが、クラクションも鳴らなくなっていた、車の中は一気にパニック状態になり、必死になって鍵を回す運転手と、それを必死に急かす助手席の男性。
後部座席に座っている女性2人は悲鳴をあげながらパニック状態に陥っていた、だが4人がどんなに混乱しても車は一向に動かない、だが誰も、「外に行って車を確かめよう」とは言い出さなかった。
4人の誰もが席にしっかりと座りながら震えていた、もはや外に出る事事態タブーになっている、当たり前かもしれない、山から滑り落ちた2人の話を聞いた後、「よし、外に出よう」なんて言い出せないに決まっている。
だがそれでも、この危機的状況が変わる可能性は一切見えない、誰かに助けを求めたくても、こんな山の中まで助けに来る人なんていない、逆に怒られるか、馬鹿にされる可能性の方が大いにあった。
「っ?!!」
突然女性の一人が、聞き覚えの無い声を聞いた、しかもその声は鮮明且つはっきりと聞こえ、常に声がやまびこ状態になる山の中で聞こえたとは、にわかに考えられなかった。
その声は男性の様に聞こえたのだが、今目の前で動画を撮影している男性2人の声ではない事が、なんとなくだが女性には分かった、しかもその声は若干枯れかけ、正気を完全に失っている様に聞こえたのだ。
女性はこの事を皆に知らせたかったのだが、あまりの恐怖で声あおろか足も動かなかった、そして神経が完全に混乱している3人は、パニック状態に陥っている女性に全く気づいていない。
今思えば、今この瞬間に逃げ出していれば、「あんな大惨事」には至らなかったのかもしれない、もうすでに異変は起き始めていた、それを一番最初に気付いた女性の顔からは、ジワジワと冷や汗が滲み出ていた。
その女性の異変に気付いたのは、1人の男性だった、普段から穏やかな顔をしている女性の顔が異様なほど青ざめていたので、とりあえず声をかける事に。
「・・・おい、大丈夫か??」
「ちょっと、どうしたの?
顔色悪いよ?」
「なんだなんだ?怖くなって動けないのか??」
男性の一人が固まっている女性をからかうが、その女性の異変に気付いた男性も、耳に妙な音が入り込んでいる事に気付く、その音は明らかに、草を踏みしめている音だった。
だがこんな夜中に山の中を歩く人なんていない、ましてや此処は、人が入ってはいけない場所でもある、4人より先に来た先客かもしれないと男性は思ったが、それにしてはおかしい。
夜の山の中は暗闇に包まれ、光が一つでもないと歩く事は困難だ、無闇に歩くと、怪我をしたり遭難するリスクも高くなる、此処はあくまで山の中なのだから。
なのに、音がする方向を見ても、光なんて一切見えない、この暗闇の中なら、僅かな光でもすぐに認知できるのに、音だけが4人に向かって近づいて来ている様に聞こえたのだ。
男性はさすがに危険だと判断して、3人に帰る事を提案するが、2人だけがそれに反対した、2人の興奮は一向に冷めず、ますますヒートアップしている。
自分が今どんな危険な状況にいるのかさえも分からなくなった2人は、帰る事を提案した男性を「臆病者」呼ばわりしてからかい始めた。
恐怖と苛立ちが心を占拠した男性は、震えが止まらなくなっている女性の肩を持ち、来た道を真っ直ぐに下って行く、女性は2人も連れて行った方がいいと言ったが、男性は聞く耳を持たない。
足元がおぼつく女性の為に、男性はしっかりと女性の体を抱きかかえ、ゆっくりと山を下る、そして時間をかけ、車がようやく見えて、2人が安堵の表情を浮かべた、その時だった。
「きゃぁああああああああ!!!」
「うぁあああああああああ!!!」
上の方から、2人の叫びが聞こえた、せっかく車に辿り着いた2人の足は止まったが、後ろを振り返る事はできなかった、2人共恐怖で体が動かないのだ。
叫び声は明らかに、山の上に残った2人の声だったのだが、それは悲鳴とも驚愕とも思える、心の底から恐怖・驚愕している様子だった、恐怖心が若干和らいだ2人は、とりあえず車の中に逃げ込む。
幽霊だったとしても、大型の夜行生物だったとしても、2人にはもうどうしようもできない事態だったからだ、今この場ですぐ、山の上に残った2人を助けに行かなかったのは、ある意味正解だったのかもしれない。
車に乗り込んだ2人は、それぞれが山に残った2人にスマホで電話をかけたが、でる気配が無い、そこでようやく、自分たちが置かれている危険極まりない状況に気付いた2人。
だが車の運転席に座った男性は、諦めずに何度も電話をかけ続ける、女性は来た道をただジッと見守っていた、2人が「ドッキリでしたー!!」と、あどけない笑顔で帰って来る事を信じて。
しかしそんな女性の思いとは、少しだけ意に反した事が起きた、山の奥から、2人の走る音が聞こえて来るのだ、運転席に座った男性は鍵を開けて、走って来る2人がすぐに車に入って来られる様にした。
そして車に向かって猛ダッシュで走って来た2人の姿は、先程とは比べられないほど、酷く汚れていた、2人は裸足で、女性は髪を乱しながら走り、男性は涎を垂らしている。
走って来た2人は車に駆け寄ると、すぐにドアを開けて車中に飛び込んだ、先に車に乗っていた女性は、涙目になりながら息を切らしている女性の背中をさすった。
ブルブルと震えている女性は、背中をさすった女性に抱きつくと、大声で泣いていた、運転席に座った男性は、コンビニの袋の中から、自分が飲んだ飲みかけのスポーツドリンクを、助手席に飛び込んだ男性に渡す。
それを一気に飲み干した男性は、先に車に乗っていた2人に、とりあえず自分達の身に何が起こったのか話し始めた、後ろの席に座っている女性2人は、互いの手を握っていた。
2人が車に帰った後、残った2人は崖付近に近づくが、その時は何も起きなかった、だが2人がスリルを思う存分楽しんで、2人が待っている車に戻ろうとした、まさにその時だった。
山を下ろうとする女性の手を、誰かが掴んだのだ、だが女性は、てっきり隣で一緒に歩いている男性の悪ふざけだと思い、あえて何も言わなかったのだ。
しかし、その悪ふざけをしているであろう男性の方が、足を止めて隣の女性を見ていた、その態度に女性の心は一気に凍りつき、手を振り解こうとしたが、手ではなく首が動いてしまう。
そして女性が見たモノ、それは頭がグチャグチャになった男性が、血まみれの手で女性の手首を掴んで、こう言った。
「逃がさない・・・・・・・。」
驚いた2人は、とにかく山の麓に止めておいた車に逃げ、道を走らずに山を滑り落ち、今に至るらしい、山を滑り落ちた証拠に、2人の体のあちこちは泥まみれだった。
運転席に座っている男性は、とりあえず近くにあるコンビニに行って話と心を整理しようと、エンジンの鍵を回した。
「・・・・・・・??」
「・・・おい、どうしたんだ?」
「あっ・・・・・いや・・・・・。」
エンジンの鍵を回し、車が何度も雄叫びをあげているにも関わらず、全く動かない、運転席に座った男性は若干イライラしてしまい、ハンドルの中央に拳を入れた。
だが、クラクションも鳴らなくなっていた、車の中は一気にパニック状態になり、必死になって鍵を回す運転手と、それを必死に急かす助手席の男性。
後部座席に座っている女性2人は悲鳴をあげながらパニック状態に陥っていた、だが4人がどんなに混乱しても車は一向に動かない、だが誰も、「外に行って車を確かめよう」とは言い出さなかった。
4人の誰もが席にしっかりと座りながら震えていた、もはや外に出る事事態タブーになっている、当たり前かもしれない、山から滑り落ちた2人の話を聞いた後、「よし、外に出よう」なんて言い出せないに決まっている。
だがそれでも、この危機的状況が変わる可能性は一切見えない、誰かに助けを求めたくても、こんな山の中まで助けに来る人なんていない、逆に怒られるか、馬鹿にされる可能性の方が大いにあった。