「・・・で、結局その・・・・・ヒツジ男は回収できたんです
か?」

「あぁ、それは『向こう』の仕事だからね、でも遺体はちゃんと見つかったから、今ソレは『死体安置所』に入れられて、処置なども『向こう』で決断するらしいよ。」
そう言いながら、キセキは設計図を書き進めていた、ボウガンに装備する機能の追加と、耐久力の計算式も書き込まれていた、見るだけで頭が痛くなりそうな図だ、恐らくこの図を解読できるのは、書いた本人であるキセキにしか分からないのだろう。
キセキと話をしていた女性は、ボウガンの部品一部一部の改良に着手していた、機能が増えるという事は、それなりに重量も増えてしまう、それを軽減させる為に、少しでも無駄を取り除く作業も重要だ。
設計書通りに出来るかどうかは、まだ定かではない、だがもし実現できれば、手荷物の軽減や、仕事の安全率が急激に伸びる可能性もあった。
キセキの机の上は消しゴムのカスだらけ、そして転がっている2・3本の鉛筆は、もうすでに芯が引っ込んで描きづらくなっている、キセキはデスクワークの時だけ眼鏡をかけている。
もちろんこの眼鏡も『整備部門』で作られた特殊な眼鏡、スマホやテレビなどのブルーライトをカットするレンズが備わり、長時間耳にかけても顔が疲れない構造になっている。
デザインの種類が豊富なのはキセキの発案、暇な時に彼女が色々なデザインを落書き感覚で描いていたら採用された形だ、ちなみに今キセキがかけている眼鏡は赤い縁、キセキと話している女性は黒い縁に、耳にかける部分には名前が彫られているデザイン。
女性はこの「整備部門」で働き始めてからまだ数ヶ月しか経っていないが、その腕は熟練の技術士にも手が届くレベル、今では「整備部門」で大半の仕事を引き受けてもらえるほどの信頼を得ている。
キセキとは何度か面識があり、前々から人付き合いがあまり得意ではなかった女性にとって、キセキは数少ない話し相手でもあるのだ、キセキと話している間、女性の手つきは普段より早く細やかになっていた。
「でも、今回はまさに『九死に一生を得た』依頼でしたね、私も話を聞いてい る間だいぶヒヤヒヤしてましたよ。」

「そうね、じゃなかったら今頃私、此処に居られないよ。」

「・・・怖いこと言わないでくださいよ・・・。」

「ごめんごめん、まぁ『結果良ければ全て良し』っていう事でさ、一件落着!



・・・・・と言いたいところではあるんだけどね・・・。」

「??」