その後、キセキは応援に来た仲間に発見され、無事保護された、そしてその後ようやく警察隊が現地に到着した、到着が遅れた理由としては、鉄道橋が崩れた衝撃で、村に入る為の道が土砂崩れで封鎖されてしまったのだ。
その他にも村に入る為の道はあるのだが、車一台がようやく通れるほどの道幅しかないので、村から逃げる村人と警察隊で混雑してしまった。
キセキの応援はすでに村の中で待機していたので、保護されたキセキ達はしばらく村の中で身を潜めていた、その村に唯一建っている民宿の一室は、すでにキセキが予約を入れていたのだ。
そして捜査に来た警察には、「この民宿に泊まっていたが、地震の影響で足を怪我して避難できなかった」と伝えた、ちなみに応援に来たキセキの仲間は、彼女と共にその民宿に泊まっていたので、誰にも怪しまれなかった。
キセキと応援達はヘリコプター救援によって救助され、鉄道橋から落ちそうになった時に捻ってしまった彼女の足は、数日で完治してあっという間に退院できたのだ。
警察の調べでは、「鉄道橋の劣化による事故」として片付けられ、鉄骨の下敷きになってしまった男は、「単なる自殺者」という結論となり、事故の騒ぎは幕を下ろした。
ちなみに、男は都内にあるアパートで一人暮らしをしていたが、無職の為家賃が払えず、数ヶ月前に大家から追い出され、そのまま行方知れず。
そもそも両親からも相手にされなかった男は、万引きの常習犯だったので、捜索隊が男を発見した時、「あぁ、この男か」という反応をしていたらしい。
村を封鎖していた土砂は、数日でどうにか撤去され、村に住んでいた村民とマスコミが押し寄せていた、もちろんキセキの元にもマスコミが来たのだ。
だが警察が「事故」として処理した件だったので、キセキがマスコミから注目された期間は短かった、自殺者として片付けられた男は、少しの間だが世間に名前が回った。
しかしその熱もあっという間に冷め、結局男の葬式はどうなったのか、遺体はどうなったのかは、誰も知らない、噂によると、男の葬式は近親者のみで執り行われ、遺骨の受取人は誰も名乗りを上げなかったらしい。

だがそれよりも、キセキが一番気になっていた事柄は、まだ未解決のままだった、それは、あの時キセキを道連れにしようとしていたヒツジ男の行方だった。
警察隊の調べでは、見つかった遺体は男のみで、キセキや彼女の仲間達が色々な手で調査したが、ヒツジ男のその後の情報は何一つ掴めないまま。
だがその後、鉄道橋があった場所で囁かれていた不可思議な噂はパッタリと途絶え、心霊スポットのサイトからも外されたその場所は今、人の手がつけられていないただの山となった。
ちなみに川の堰き止めも数日後には復旧され、その件で水不足だった地域も元に戻った、そもそも川を堰き止めている物がただの鉄骨だったので、その鉄骨を取ってしまえば後は簡単。
だが少なからず、山の自然生態には影響が出てしまったのだろう、その川の水を生命線にしている動物達は少なくない、その証拠に水を求めて村に入ってしまう動物達が、しばらく村の中を彷徨っていた。
だが村の村民は、決して動物達を邪険にはせず、家の玄関にタライを置き、水道の水を入れておいた、すると動物達は、村民達に危害を与えないまま、川が復旧すると速やかに山に戻って行ったのだ。