「違うよ。よく聞け。お前が田野優一。つまり、田野さくらの息子だからだ。知ってるだろ?お前のお母さんは…」




「元天才選手、でしょ。」

〈田野さくら-高校2年生のときにその才能を発揮し、全国大会、100メートル女子で優勝。
その後も勢いは衰えず、3年後のオリンピック代表になるだろうとも言われていた。
…しかし、田野さくらはオリンピック代表になる前に陸上界から姿を消し、だんだんと世間からも忘れられていった。〉








「あぁ」

「コーチ。それって何なんですか?ただの肩書きで僕を選んだってことですか?」


「違うよ…。お前を変えたかったから。」

「変える?」