「別に誰でもはよくねえよ」
「ああ、ブスとデブとバカは無理なんだっけ?」
そういえば前にもしたよね、同じような会話。
どうでもいいことだけど。
本当に、どうでもいいことだ。
何もかも。
喧嘩したならまた仲直りしたらいい。
どうしても気まずくなるなら別れたらいい。
ユウキ。
あなたは何の迷いも疑いもなく私に相談してくるけれど、正直なところ、恋愛ってあまり私には向いていないんだと思う。
特に、きみたちみたいなキラキラ眩しい、素直で純粋な恋愛は。
(結局、似た者同士なんだよね、こいつと私は)
最後に紺色のソックスを履いて、空っぽの鞄を肩に掛ける。
いつだったかユウキが誕生日にくれた、薄汚れたクマのキーホルダーがだらしなく揺れた。
……ただ、好きだった。
踏み込むつもりはなかった。
叶わないのはわかっていた。
ただそっと表面だけに触れようとして、気づけばずぶずぶと沈み込んでしまっていた、
私と、坂田の、恋。

