身体を重ねたときにいつも鼻孔を抜ける、石鹸に似たその甘いにおい。

嫌いじゃない。
でも坂田は嫌い。

坂田は、


「もうさ、思い切って押し倒しちゃえば?」


──香水みたいに甘くない、こういう奴だから。


「……は?」
「牧野って押しに弱そうだし。井上と喧嘩してるなら、今がチャンスじゃね?」
「……意味わかんない」

「欲しいなら奪えばいいだろ」


上半身を起こして涼しい顔でシャツを羽織る、坂田が憎い。

……どの口が、それを言うの。

あんただって欲しいくせに。
ユウキからナナミを奪えない、腰抜けのくせに。