「がうがうがう!」

「うがーーー」

「こ、こらっ!だめだって言っただろっっ!」




ゆかりさんのことでちょっとばかりぎくしゃくとはしたけれど……
幸いにも、それを引きずることはなかった。
テーブルの上には次々に豪華な料理が並べられ、その度に小ヨウカイ達はそれに手を出そうとして、俺とゆかりさんはそれを止めるのに必死で……
そんな俺達を見て、ミマカさん達はおかしそうに笑っていた。
悪意のある笑いじゃなくて、素直な笑いだ。
でも、メイドさん達はちょっと違う。
考えすぎかもしれないけど、どこか馬鹿にしたようにくすくす笑ったり、ゆかりさんの方を見て、ひそひそと内緒話をしているみたいだ。



食卓の上が整うと、みんなにお酒のようなものが手渡され、ミマカさんが乾杯の音頭を取った。



「美戎の誕生日を祝って……!」



グラスをぶつける行為はなかったけど、みんながグラスを高くあげてそれを一気に飲み干した。



「お誕生日おめでとう!」

「おめでとう、美戎!」



口々にみんながお祝いの言葉を言って、美戎はその度に嬉しそうに微笑んで……



なんだろう……その光景はものすごく絵になる。
美戎って、誰にでも愛される…いや、よく言われる言葉だけど、愛されるために生まれて来た人間なのかもしれないな。
なんだか、過去のことは言いたくないみたいだったから、何か暗い過去でもあったのかなって思ったりもしてたけど、やっぱり昔からずっとみんなに愛されて過ごして来た人なんじゃないかって思う。
だって、ほら……
美戎の笑顔を見るだけで、あんなにみんな嬉しそうな顔をして……



「美戎……これは、私からのプレゼントだ。」



ミマカさんが布に包まれた小さな包みを美戎に手渡した。



「まぁ、あなたったら…ずるいわ。
みんなで一緒に渡しましょうって言ったのに……」

「そうよ。そうよ。
……美戎さん、これ私から。」

「まぁ、アジュカまで……」

三人はなぜだか渡す順番にこだわってるみたいで、アジュカとお母さんは我先にとプレゼントを差し出した。